インドネシアの熱気と日常を楽しめるメダン

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メダンはインドネシア、スマトラ島北部にある、人口200万人を超える同国第3の都市。空路ならマレーシア・クアラルンプールからは50分程で、シンガポールからは約1時間30分で細長いマラッカ海峡を横断して到着できる。ジャワ島にある首都ジャカルタからはおよそ2時間30分かかることを考えると、ここがインドネシアにとっての近隣アセアン諸国との接点の一つであろうことが想像できる。

メダン2

フライトが到着する「クアラナム国際空港」は、2014年3月に正式開業した真新しい空港。ターミナルやランプを見回すと、その規模の壮大さは、東南アジアの新空港でときおり感じる「ああ、また大人の事情でデカイすぎるのを作ってしまったのか?」と言うレベルである。事実、敷地面積1365ヘクタールは成田国際空港より広い。到着のイミグレーションからロビーへと進むと、白亜のインテリアなどの設備の豪華さに少しとまどう。混雑もなく快適なことには不満はないが、未完成の上階フロアがまるごと放置されていたり、店舗スペースがガラ空きだったりするのを見て、「この先本当に大丈夫なのか、物事を計画的に進めているのか」と心配してしまうのは、旅行者の老婆心か。

そんな意外なまでの規模感と洗練度に圧倒された気分も、新空港に合わせて開業したインドネシア初の本格的な空港鉄道「レイルリンク」が終着点のメダン市内駅に到着すると、一掃される。駅周辺にはそれなりの高さの商業ビルや行政の建物、整備された公園などが並ぶものの、ストリートと市中の空気感にはしっかりとインドネシアの熱気がびっしりと溢れているからだ。ここから先、喧騒はいたるところにあり、エアコンが効いた空間は限られたものとなるだろう。

メダン3
メダンは19世紀のオランダの植民地支配の時代よりタバコ・茶・ゴム・油椰子などのプランテーション産業の拠点として発展し、現在もスマトラ島最大の交易地である。街中では、貿易商らが扱うさまざまな品々が大量に行き交う様子が今も日常だ。そんな活気ある都会でありながら、この街は首都から離れているからか、官僚的な雰囲気や目に見えない厳格さがあまり感じられない。どちらかというと自由な経済都市といった風情である。そしてここでは、いわゆる「観光リソース」の類がほとんど整備されていない。中心部には街の歴史を支えてきたモスクや史跡などが少なからずあるものの、どれも「これだけは抑えておきたい」という雰囲気を醸したり、広くPRされている訳ではない。総合的な観光ビジネスの気配はほぼなく、その産業そのものが極めて地味なのである。街全体を見回しても、大規模な道路や巨大ショッピングモールなどは増えているが、旧市街を中心にまだまだ雑多で埃っぽい通りや地域がどこまでも広がっている。そこにモーターベチャ(小型バイクを改造した輪タク)がクラクションを鳴らしながら走り回り、屋台が軒を並べている。その光景は懐かしい古き良き東南アジアの情景をそのまま残しつつ発展する、現代のインドネシアの姿なのだろう。

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メダンの人々はインドネシアの中でもいい意味でコンサバかつ素朴で、伝統的に熱血漢が多いそうだ。マレーシアやシンガポールから来たビジネスマン以外はほとんど外国人旅行者を見かけないことからも、この街の通りを歩くと、道端や路地で東南アジアのイスラム国家の平穏な日常も間近に見ることができる。そこには実直で質素な暮らしながらも、どこか寛容で落ち着いた笑顔を絶やさない人々の人生がある。「旅行でメダンに来た」と伝えるだけで、地元の人から「おお、それは、それは、遠いところへようこそ」と迎え入れてくれるようなリアクションをもらうのは、旅人としては最高に嬉しく、そしてどこか旅の原点に立ち返るようなハッとさせられる体験である。そんな土地は現代では、多くはない。

そんなメダンの街は特にスケジュールを立てずに、ゆっくりと歩いて博物館や市場、グランドモスクなどを巡り、屋台やローカルレストランで庶民の料理を味わい、子どもたちとたわいのない会話を交わすなど、自由にゆったりと街の空気を体感するのがお勧めだ。市内の案内などには英語はほとんどないが、同時に旅行者に向けたぼったくりや騙しのようなものもほぼ存在しない。観光客に向けた演出や、剥き出しの観光産業などのないこの土地では、旅行者も現代のインドネシアの生の日常の一部になれるかのようだ。

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街のいたるところに大学や図書館があり、若い人たちを多く見かけることも印象的だ。彼らの多くは学習意欲と好奇心でいっぱいで、中には「インタビューしたい」などと英語で声をかけてくる学生グループもいるほど。よほど外国人旅行者が少なくて、しかし外の世界に興味があるいということだろう。到着時に新国際空港は無用にデカいのではと心配したが、国の経済の発展とこのような若い世代のエネルギーを目の当たりにすると、あながち無計画ではないのだろうとも思ってしまう。そのような土地の持つエネルギーを感じることこそ、東南アジアの都市を歩くことの面白さである。

メダン7
(おまけ) メダンはスマトラ島北部という地理的条件からも、(マレー半島同様)中華系のインドネシア人たちが多く住む。中国本土にルーツを持つ彼らは、今でも時に中国語を話し、生活の中で中国文化を継承している。料理もしかりで、結果、メダンでは中華料理あるいは中華の影響を受けるインドネシア料理がとても美味しい。インドネシア料理はどこでも楽しめるほか、「中華街」に相当する通りもいくつかあるので、滞在する機会があればぜひ試してもらいたい。  (written and photographed by Keizo Yamamoto)